やっぱ、真賀田四季は天才でした。
多分10年以上前に読んだんだと思うんですけど・・・森博嗣先生こそ、まさに天才ではないかと私は思うわけです。
笑えることに、最初この本を読んだ時の感想が「現代の天才がここにいた!」という本当に鮮烈なものだったんですけど、10年も経過するとすごかったことしか覚えておらず、読み返したのに結末をほぼ忘れてました。
本当に根本的なトコロは抜けてないけど、トリック的なものは全く抜けていて、そして読み返したのに「どうなってるの?」と真相にたどりつけない凡人さ。
まあ・・・一番最初から伏線が見事に張られているんですけど、凡人な私ではその伏線を持って真相にたどりつけないんですよねぇ。
お話としては、天才的な頭脳をもつ「真賀田四季博士」は、昔両親を殺したことである島の研究所の一室に軟禁された状態で研究をしています。
そして主人公達がその島に滞在している間に、真賀田博士が殺される・・・。
その、人を殺したから軟禁とか、まぁいろいろと突っ込めるところはあるはずなんですが、妙にリアリティがありすぎて私はなにひとつつっこめないのですけど。
ミステリーとして完成されているところが好きなのもありますが、私がしみじみとすごいと思ってしまうのは、自分の普段の概念を覆すような解釈が、てんこ盛りなところ。
これは、私が凡人すぎるから感動しすぎるだけなのかしら。
自分の固定観念で凝り固まったものが剥がれ落ちていく感覚。
話としてはスピード感もあるし、交わされる会話ひとつひとつに重みがあり、非常に中身が濃い作品だと思います。
好きなのは「7は孤独な数字」であること。
これ自体が伏線のひとつなので、あまり出してはいけないものなんでしょうけど。
7というとラッキーナンバー的なイメージしかない私にとって、孤独な意味は腹落ちしたけど、やはり概念が変わるコトバでした。
そして、「現実とは・・・現実とは何か、と考える瞬間にだけ、人間の思考に現れる幻想だ。普段はそんなものは存在しない。」こと。
私は典型的な文系人間なのですが、思考が整理され、定義が明確にされているものに落ち着きを感じます。
普段うすぼんやり感覚で感じているものを、犀川先生と萌絵ちゃん、真賀田博士などの会話で全く違う意味に再構築されていくのを読み進めるのは、驚きであり、畏敬であり。
読んでいくほど、普段の自分の概念を覆される感覚があり。
だからこそ、彼らを天才と感じ、その天才を生み出した森先生のすごさを尊敬するのみなのです。
ナニいっちゃってんの?って話ですけど。
つまりはやっぱり「すべてがFになる」は素晴らしいということで。
しばらく、森先生のS&Mシリーズを再読するかも・・・。
既に「笑わない数学者」を借りてきちゃいました。